ヤマト宮廷は文学を通して帝国となった。

古代のヤマト国家は自分たちの統治が全世界を覆うかのように想像していた。
ヤマト宮廷が生み出したあらゆるテクストに、この帝国的想像が表現されている。『万葉集』はその最たるケースである。
『万葉集』を国民的歌集とする通念は、近代国家が生んだ幻影にすぎない。
虚妄が暴かれた今、本来なされるべきだった帝国的歌集としての解読を実行する。
米国発の問題作、最適の訳者を得て待望の刊行!

「ヤマトの貴族社会は、自分たちで管理する法的、経済的、軍事的業務を必要としたが、それだけでなく、統治の主体たる彼ら自身と、彼らの支配権がくまなく及ぶはずの領域との関係を納得するための、文化的なヴィジョンや表象をも求めていた。本書で私は、この必要の重要な部分が『万葉集』の歌々によって満たされたことを論じてきたつもりである。」(「結論」より)

トークィル・ダシー Torquil Duthie
カリフォルニア大学ロスアンゼルス校アジア言語文化学科教授
1968年イギリスで生まれ、その後まもなく一家で南スペインに移住。1992年ロンドン大学東洋アフリカ研究学院卒業。北海道大学文学研究科国文学専攻修士課程を経て、コロンビア大学大学院博士課程修了。
主要著作:Man’yōshū and the Imperial Imagination in Early Japan (Brill, 2014年)、『万葉集における帝国的世界と「感動」』(笠間書院、2017年)。

品田 悦一 しなだ よしかず *訳
1959年群馬県生まれ。東京大学人文科学研究科博士課程単位取得修了。聖心女子大学文学部教授などを経て、現在東京大学教授(大学院総合文化研究科)。
主要著作:『万葉集の発明 国民国家と文化装置としての古典』(新曜社、2001年)、『斎藤茂吉 あかあかと一本の道とほりたり』(ミネルヴァ書房、2010年)、『斎藤茂吉 異形の短歌』(新潮選書、2014年)、『「国書」の起源 近代日本の古典編成』(齋藤希史との共著、新曜社、2019年)。

北村 礼子 きたむら あやこ *訳
1973年東京生まれ。慶應義塾大学文学部卒業(英米文学専攻)。
ニューヨーク市立大学留学を経て翻訳に従事するとともに、慶應義塾大学にて米文学演習(翻訳実技演習)のアシスタントを務める。訳書多数。

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