耳鼻咽喉科学・頭頸部外科学のすべてがこの中に。

1967年に初版を発行して以来,わが国の耳鼻咽喉科領域のバイブル的役目を果たしてきた本書は,時代に即して改訂を重ねてきた.今回の改訂では,図表の見直しを行い,最新の知見を加え大幅な改訂を行った.
総論では解剖や生理,検査法などが丁寧に書かれており,各論では各疾患の診断や治療などについて多くの図表を用いて簡潔にわかりやすくまとめられている.医学生や研修医のみならず,専門医にも手にしていただきたい書である.

『新耳鼻咽喉科学』改訂12版は,2013年2月に改訂11版が刊行されて以来9年ぶりの刊行となります.この9年間は,基礎医学,臨床医学,社会医学のどの分野においても大きな進歩があり,第12版には耳鼻咽喉科頭頸部外科学のすべての分野の進歩を積極的に取り入れられるように改訂を進めてきました.
本書の原著者は,当時東京大学耳鼻咽喉科学教室の第4代教授(1947.6~1969.3)切替一郎先生です.学生や初学者のために1967年に『新耳鼻咽喉科学』を発刊しました.今回の改訂で55年が過ぎたことになります.半世紀を越えて,耳鼻咽喉科頭頸部外科学の座右の書として親しまれてきた本書の改訂は,初版から第8版までを切替一郎先生,第9版・10版を東京大学名誉教授の野村恭也先生,第11版と本書の第12版を小生が担当しました.
今回の改訂では,切替一郎先生の読者へ向けての言葉「全人的な患者への対応」を最初に掲載しました.切替一郎先生の哲学的な考えと懸念と願いが表現されています.
画家のポール・ゴーギャンのタヒチの娘たちを描いた絵のタイトルに「われわれはどこから来たのか,われわれは何者か,われわれはどこへ行くのか」というのがあります.改訂11版より各分野にその専門領域の歴史が書かれています.古代エジプト・ギリシャ・ローマ時代より現在に至るまでの長い歴史の中でどのように歩んできたかがわかるように,その領域を俯瞰できるようにしました.この部分を読んだ後,その分野を学びやすくなると同時に過去・現在だけではなく,われわれはどこへ行くのかを考え,想像することも期待いたします.
本書は,どの分野も総論に発生学,解剖学,生理学を扱っています.本書を通して“考える”耳鼻咽喉科頭頸部外科学の教育を目指してきました.各論は,現在までの伝統的な内容と,この9年間の進歩により定着した検査,診断,治療,手術を大幅に取り入れました.その例として内耳奇形,内耳道奇形の図があります.この分野ではその分類が世界に受け入れられているトルコ・ハジェテペ大学のLevent Sennaroɡ̆lu教授の御協力を得て掲載いたしました.この分類は人工内耳手術のための診断に欠くべからざるものになっています.緩和ケアについても全人的医療の例として新たに付け加えることにしました.
今回より執筆者として岩﨑真一,近藤健二,吉本世一の3名が加わりました.本書は著者以外の多くの先生方にも御協力をいただきましたことをここに感謝申し上げます.
本書は改訂を重ねるごとに,より充実し,かつ厚くなってきました.学生,初学者に限らず,専門医,医学教育関係者にとっての座右の書としてこれまで以上に利用して活かされ,教育・診療・研究,そして明日の医学を考えるためのレファレンスとして役立つことを願います.同時にこれからの耳鼻咽喉科頭頸部外科学の発展に大いに貢献できるように期待します.
改訂12版にあたり,南山堂の高見沢恵氏に御努力をいただきました.愛読者を含め多くの皆様から貴重な御助言をいただきました.心より御礼を申し上げます.
2022年2月