東日本大震災直後、当社の自主的な判断ではじまった防波壁の建設。沿岸にある一般的な防波堤や防潮堤とは違い、陸上に遡上した津波を防ぐ浜岡原子力発電所の防波壁は、これまで当社で手掛けたことがない構造物でした。設計条件を自ら新たに決めなければならず、参照すべき設計の基準や前例もすぐには探しだせない状態。福島第一事故や海外などの知見を踏まえた原子力発電所の新しい規制基準が施行される前でもありました。しかし、地域の方々の不安を少しでも早く軽減したい。我々はそんな想いで、それまで積み重ねた経験を活かし、実験や解析をおこないつつ、そのデータも活用しながら、設計を進めることを決断。それまでの想定を超える地震や津波にも耐えられる構造を目指しました。この決断の早さが、いち早い着工を実現できた要因だと考えています。
防波壁を施工する現場は、発電所の前面約1.6キロメートルにわたり、場所によって、地表から岩盤までの深さや土壌や地下水の状態などの条件が異なります。そのため、設計上の強度を実現するには、精度の高い施工が必要でした。そこで、現場の施工チームと設計部署とが密接に連携。現場の情報をきめ細かく設計部署に伝え、設計に適切に反映しながら施工を24時間体制でおこなうなど急ピッチで進めました。内閣府の津波断層モデルによる最大クラスの津波に対して、津波対策の強化の観点から、かさ上げ工事の実施を判断した際にも、既存の壁を活かせたのは、元々の設計に余裕を持たせていたこと。そして、この一体感のある遂行力があってこそだと自負しています。