愛媛県農林水産研究所水産研究センターは,沿岸定線の28測点において毎月海洋観測を実施している.各測点では調査 船の船底に搭載された超音波多層流速計(ADCP)により流速が記録されている.潮流の卓越する豊後水道では,流速の 瞬間値から得られるのはその時の潮流の情報であり,測定のタイミングにより流向・流速は変わるため,沿岸定線観測時 のADCP データはほとんど利用されていない.しかし,ADCP データから潮流を正確に除去でき残差流を求めることが できれば,有用な情報を得ることができる.本研究では,27年間の月1回のADCP データから潮流がどの程度の精度で 見積もることができるかを,数値モデルの出力を使い疑似観測データを作り検討した.豊後水道南部海域では潮流が弱く 残差流が大きいため推定精度が悪いが,豊後水道中部,北部では誤差1cm s-1~3cm s-1で8分潮の潮流を推定できる ことを示した.この結果から,愛媛県農林水産研究所水産研究センターのADCP データを調和解析し潮流成分を除去 し,水深10m と50m の1,4,7,10月の残差流分布を示した.豊後水道の残差流の季節変化は小さかった.これは潮 汐残差流が卓越するためと考えられる.