漢民族 のなかにあって独自の伝統、生活様式、および 方言 客家語を保持するとされる人々。「客家人」( ハッカ アニン)と称するほか、「客族」(ハッツウ)、「客属」(ハッス)、「客人」(ハッニン)などの別称がある。 原郷 は、彼らのなかで、黄河中流域の中原(ちゅうげん)地方であると信じられている。紀元4世紀、東晋(とうしん)の時代以後、五胡(ごこ)乱華によって第1回の南渡を経験して以来、19世紀後半の清(しん)朝同治年間まで5回(説によっては3回)、南下移民を余儀なくされたとされる 伝承 がある。「客家」とはそもそも「客而家焉」(客にして家す)という義であり、移住先の 広東 ( カントン /コワントン)省内で、先住の漢民族と区別する意味でつけられた他称であったとされる。

人口は諸説があって一致しないが、1960年代の香港(ホンコン)崇正公会の推定では中国国内に4000万、 華僑 ( かきょう )として500万であった。もっとも人口の多いのは広東省で約1550万、以下江西省、広西( こうせい /カンシー)チワン族自治区(ともに約500万)、 福建 省(約400万)、 四川 (しせん/スーチョワン)省(約250万)、 台湾 (約170万)などとなっている。 太平天国 の乱(1850~1864)の首領、 洪秀全 は客家出身であることがよく知られているが、そのほか、中国近現代の歴史的要人のうちには、客家出身とされる者が少なくない。

近年の諸研究で「客家」は近代に「発見」された人々のカテゴリーであり、時代によって対象となる人々が異なっていたことが判明しつつある。

[渡邊欣雄]

『飯島典子著『近代客家社会の形成』(2007・風響社)』 『瀬川昌久・飯島典子編『客家の創生と再創生』(2012・風響社)』

中国,広東省北東部,福建省,江西省, 広西チワン族自治区 の丘陵地帯に居住する漢民族の一種。台湾では 桃園 ,新竹などに多く居住している。客家は,外来の移住者に対する呼称で〈よそもの〉の意といわれる。 言語 客家語 。料理も独特な客家料理がある。数期にわたって北方の漢民族が南遷したものとみられ,台湾・海南島に強制移住させられたものもある。戸外労働には女子が従事し,男子は家内労働もしくは 華僑 (かきょう)として 東南アジア など海外へ出る。主として農業に従事する。 太平天国 のリーダー 洪秀全 ,孫文,【とう】小平,リー・クァンユー,李登輝も客家である。約1500万人。
→関連項目 イポー インラック 桃園 福建土楼 〈ハッカ〉とは客家という漢字の広東系客家語音で,外国人からは普通この音で呼ばれる。もともと客とは他郷から来た移住者の意味で,土着民が区別していった語である。中国南部の広東,湖南,江西,福建諸省の交界地域に居住する漢民族の一種で,とくに広東の梅県,興寧,大埔,恵陽の諸県に集中している。さらに広西・四川にも広がり,海南島,台湾のほか東南アジアの華僑に多く,総数約1500万人に上る。中国南部に移住してきた原因,経路には疑問があるが,彼らの伝承によれば,(1)4世紀初めの 永嘉の乱 ,(2)9世紀末の黄巣の乱,(3)12世紀初めの北宋の崩壊,(4)17世紀の明の滅亡を契機として,黄河流域の漢民族がしだいに南下して以上の地域に定着し,先住の土着民から客家といわれ,やがてみずからもこれを他と区別する呼び名としたという。

【客家語】より

…使用人口は推定3700万。その顕著な字音特徴は古全濁声母の無条件無声有気化であるが,これは江西の贛(かん)諸方言にも見られ,贛客家を一つに分類する考えもある。 客家 の華北からの移住は比較的新しく,〈客〉の呼称は土着先住民に対する〈よそ者〉を意味する。…

※「客家」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典| 株式会社平凡社 世界大百科事典 第2版について | 情報

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