1980年代,経営主導的・財務志向的なSHRMが米国で誕生した。HRM-P(企業業績)リンク,即ち戦略的に人的資源を獲得・活用すれば競争優位性の源泉となり業績に資するという理論である。しかし理論的に欠陥ありとして次の様な批判が英日の論者から発せられている。⑴同リンクの実証の仕方に欠陥あり。殆どの研究はHRM-Pの相関関係を見いだす計量研究に終始し,その間の仕組をブラックボックスのままとして「理論なき測定」を延々と行っている。⑵財務偏向が進んだ故,人間的要素の優れた知見が捨象され「非人間的」な議論になった。従前の人事労務管理論以来積上げてきた(主に行動科学の)知見を棄損した。また,CSRが重視される今日の時代精神にそぐわなくなってきていることも指摘し得る。
本稿は,文献研究を通じこれらの批判の妥当性を確認かつ敷衍し,さらに実践的観点からの検証も加え今後のHRM研究に向け問題提起を試みる。