26日、中国・撫州で行われたWBA世界ライトフライ級タイトルマッチ12回戦は、王者カルロス・カニサレス(26歳=ベネズエラ)が、挑戦者2位の木村翔(30歳=青木)を攻撃的なアウトボクシングで翻弄し、119対109、119対109、118対110の大差3-0判定で勝利。2度目の防衛に成功した。木村は、WBOフライ級王座に続く2階級制覇に失敗。
上写真=木村のビッグパンチが空を切る。これは彼の“持ち味”だが、しかしいつもとは異なる姿がそこにあった
小柄なカニサレスを、木村が体格を活かしたパワーで押し潰す。そんな日本のファンの理想は実現しなかった。初回、木村はいつもどおりの豪快なフック系ブローを振るのだが、切れ味もスピードも感じられず、何より下半身の粘りの欠如が顕著だった。
かつてはライトフライ級で戦っていたが、いまやすっかりフライ級の体が出来上がっている。その上、このクラスでのテストマッチもせず、しかも前回の世界戦(田中恒成=畑中)に続き、3月の再起戦から2ヵ月という短い間隔での挑戦。その間に、恒例のタイでのハードな合宿もあり、コンディショニングの面で、不安要素がいくつもあった。減量、オーバーワーク、リカバリー……。そのどれかがうまくいかなかったのか、いや、そのすべてが要因なのか──。
決して言い訳をしない、骨太な気質を持つ木村は認めないかもしれない。けれども、この日、中国のリングに上がった男には、“木村翔らしさ”が見えなかった。
フライ級(リミット50.8kg)から自身の適正体重に戻すのと、ライトフライ級(リミット48.9kg)からそこへ戻すのでは、一般的にはわずか1.9kgの差だが、ボクシングの世界では大きな隔たりがある。結果論になってしまうが、やはり、そのリカバリーを試す試合が必要だったと、木村の動きの悪さを見て感じた。
木村得意のビッグパンチに対し、カニサレスはコンパクトなブローをつなげる。木村の左フックより先に左フックを当て、空振りさせては左ジャブを差して、挑戦者の連打を押さえる。小柄な体格を逆に利用して、的を絞らせない。左右へ動き、回り込み、木村を追わせては左右のブローを上下にヒットさせる。
追いかけることはお手のものの木村だったが、下半身の拙さに、自身がいちばん驚いたのではないか。動かない足に苛立ち、足を何度も振るようなシーンが見られた。
足が動かない、打つ際に下半身で粘れずバランスを崩す。空振りを繰り返す。そして打つ前、打った後とクリーンヒットを奪われる。スタミナの消耗に加え、ダメージも徐々に蓄積し、木村は体のバランスをさらに失っていった。
活路を見い出せそうな左ボディフックも時折打ち込んだ。しかし。固めきれない下半身では、効きも甘い。連打も利かない。ダメージを溜めこみながら、最後まで立ち続け、振り続けたのが、この日の木村の精一杯だった。
カニサレスの戦績は23戦22勝(17KO)1分。
昨年の田中戦に続き、世界戦連敗。2階級制覇もならなかった木村は18勝(11KO)3敗2分となった。
写真_善理俊哉 Photo by Shunya Seri